これから介護施設経営にとって、もっとも大事にしなければならない経営資源は人(スタッフ)だと思います。何故なら、希少なものは大事にしなければならないからです。既に、さまざまな現業分野の人手不足が顕在化しています。設備や機械による代替ができないサービス部門では、この傾向は強まって行くと思われます。
それは一旦おいておき、まずは介護スタッフの立場に焦点を当ててみましょう。私の知る介護スタッフの皆さんは、この仕事が好きで誇りを持って働いています。人に優しく、お年寄りのお世話をすることに使命を感じている方がほとんどです。
それは、「介護労働の現状について -平成22年度介護労働実態調査を中心に-」(財団法人介護労働安定センター)の「現在の仕事を選んだ理由」を見ても、「働きがいのある仕事だから」56%を初め「人や社会の役に立ちたい」「お年寄りが好き」という回答にも現れています。
しかし、別のデータから見れば、1年間の離職率は平均17.8%(平成22年度介護労働実態調査)もあり、それを補う採用が行われています。全産業平均と比較して高い数字です。これでは3年も経たずに半分が入れ替わることになり、介護技術習得やノウハウ蓄積が進まないと言った非効率をもたらすことになるはずです。この数値は経営課題として改善しなければ、介護スタッフはもちろん、マネジメント側も利用者にとっても好ましいものではありません。
ここで介護スタッフの「仕事の満足度」を見てみましょう。「平成22年度介護労働実態調査」によれば、「仕事内容や職場の人間関係、職場環境には満足だが、賃金、評価、教育、福利厚生などは不満」と説明があります。
この中から不満項目の賃金について見てみましょう。
(出所)2010年12月7日緊急雇用対策本部実践キャリア・アップ制度専門タスク・フォース介護人材ワーキング・グループ第1回会合資料「介護人材の現状」より引用
男女ともに全産業比較において、初任給の水準はともかく30代以降の水準が伸びていません。介護職の離職理由の中に、「収入が少なかった」、「将来の見通しがたたなかった」という回答が気になります。入社してから5~10年後のステップアップに向けたキャリアパスや給与体系を作って行く必要があると感じます。
最後に、介護スタッフは職場やマネジメントに対してどのような要望を持っているのでしょうか?
「介護能力の向上に向けた研修」「事故やトラブルへの対応、マニュアル作成等の体制づくり」「介護に関する事例検討会の開催」「実務の中で、上司や先輩から指導や助言を受ける機会の設定」など、まずはスタッフ自身がお客様に対してよい仕事をしたい、そのために必要な支援を希望していることがわかります。
次に、「働き方や仕事内容、キャリアについて上司と相談する機会の設定」「キャリア・アップの仕組みの整備」「介護能力を適切に評価するしくみ」「介護能力に見合った仕事への配置」など、自身のキャリア形成に関する関心も高いことがわかります。
以上、介護スタッフの立場が、どのような希望を持っているのかを見てきましたが、これらに対してマネジメントの立場は、どのように応えて行けばよいのでしょうか?
続きは後ほど。