「介護スタッフが働きたいと思う職場をつくる」は、経営者に戦略的な方針として受け止められるでしょうか?あるいは受け止められているでしょうか?「介護サービス事業を運営する上での問題点」(介護労働実態調査H22年度)施設系(入所型)を見ますと、以下のようになっています。

 まずは、人材の確保に関してみれば、「良質な人材の確保が難しい」(1位60.8%)、「今の介護報酬では、人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」(2位54.2%)、「経営(収支)が苦しく、労働条件や労働環境改善をしたくても出来ない」(5位22.1%)となっています。人材の確保のために賃金の向上や労働条件の改善をしたくても出来ないという悩みが見えてきます。

 また、介護スタッフのキャリア形成や向上心を満たす施策については「教育・研修の時間が十分に取れない」(3位30.4%)「介護従事者の介護業務に関する 知識や技術が不足している」(6位19.2%)となっています。介護従事者の知識や技術を育てるためには、良質な人材を確保し、教育・研修を充実しなければならないという悩みをお持ちだということがわかります。

 しかし、ここで気になるのは、「今の介護報酬では、人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」、「十分な時間が取れない」などの回答です。選択肢から当てはまるもの3つを選ぶアンケート方式ですので、違う考えがあっても用意された選択肢によって決まってしまう面は否めませんが、「管理者の指導・管理能力が不足している」(6.9%注1)「介護従事者間のコミュニケーションが不足している」(4.3%注1)「経営者・管理者と職員間のコミュニケーションが不足している」(4.7%注1)といった回答の低さと比べて、高い構成比となっている点には気になるものがあります。

 賃金の向上は、生産性の向上によってもたらされるものです。研修などの時間は捻出するものだと思います。それがマネジメント側の課題だと思います。今の介護報酬でさえ、十分な賃金を払えないなら、2025年問題に象徴されるように、社会保障費が減額されて行く将来は、更に払えなくなるはずです。そのように将来を見通せば、都合の良い環境ができるのを待つのではなく、自ら現状を打破する戦略的な方針を定める必要があると感じます。


注1) H25介護労働実態調査(事業所集計)
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/h25_chousa_jigyousho_chousahyou.pdf
アンケート質問「「介護サービス事業を運営する上での問題点」の全集計の構成比。この中には施設系(入所型、通所型)も訪問系も含まれる。