経営者の立場がもっている希望は、事業の継続発展だと思います。事業が継続し発展することは、今後の介護需要の受け皿として社会的使命を果たしていただけると言うことだと思います。事業の継続発展は、一般論として言えば、お客様に評判のよいサービスを提供し、売上を上げ、提供コストを下げ収益を上げることにあります。この業界の現状はいかがでしょうか?

 「介護サービス事業を運営する上での問題点」(介護労働実態調査H25年度)を見ますと、「新規利用者の確保が難しい」は、24%(全体の上位から6番目)を占めています。この悩みの比率は、さすがに需要が拡大している業界だから低いと見るのか、需要が増加しているにも関わらず高いと見るか、見解は別れるところです。いずれにしてもこれは平均値で、一つずつ事業所を見て行けば、サービスの評判のよい事業所は長い待ち行列になり、評判のよくない事業所はお客様が来ないというばらつきが既に生まれているに違いありません。

 では、収益性の実態はどうなっているのでしょうか?厚労省は、今年4月17日に介護事業経営概況調査結果を発表しています。この調査は、次期介護保険制度の改正及び介護報酬の改定に必要な資料を得ることが目的です。この調査結果を見ますと、H25年度の収支差率は、もっとも高いのが、特定施設入居者生活介護の10.4%。次いで福祉用具貸与の9.4%、通所介護の8.6%、介護療養型医療施設8.4%の順となっています。H22年度との比較では、訪問介護など一部のサービスでプラスとなったものの、多くのサービスではマイナスになっており、特にグループホーム(14.7%→8.1%)や通所介護(13.0%→8.6%)では大幅に下落しています。

収支差額率悪化

(高齢者住宅新聞2014年5月7日号より)

 これらの数字を見て、経営者の方々は、今後も大きなトレンドでみれば、介護報酬は改定のたびに減らされる方向にあると感じていると思います。業界として、正当性を主張し報酬が下がらないようにする戦いも必要でしょう。その一方で、経営の問題としてどのように継続発展させて行くかという問題意識もあると思います。
 介護報酬がどう決まるかは、経営環境に過ぎず、その制約の下で、どのようにうまくやるかは経営そのものの問題です。2000年の介護保険法改正は、多くの事業者に介護をビジネスとして解放する意味もあったと聞いています。一般のビジネスであれば、企業努力として何をして継続発展を目指すのかという視点から考えて行かなければならないと思います。

 この点について参考にしたい書籍がありました。「介護経営黒字化の極意」(杢野暉尚著 幻冬舎 2014年4月発行)です。同書によれば、著者の杢野氏は「1987年に社会福祉法人を設立して以来、順調に事業を拡大し、黒字経営を続けている。現在、愛知県と長野県、岐阜県に41の施設と145の事業所を有し、職員の給与は全国平均と比べて10%高い水準をキープしている」とあります。杢野氏は、「特別なことをしているわけではない。実は少しだけ民間企業の経営感覚を取り入れさえすればよいのだ」とその種明かしをしています。

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