前回、素晴らしい時間の使い方で成果を上げた女性の話をしました。この女性のように、自分で立てたスケジュールなら、自分で管理可能です。目標が達成できそうにないとなれば、自分の裁量でさまざまな工夫を加えて、スケジュールを見直すこともできます。いわゆるPlan-Do-Check-Action(計画-実施-点検-改善)というマネジメントサイクルを回すことが可能です。

 しかし、このマネジメントサイクル。組織の中では、個人の頑張りだけでは回すことはできません。毎日の課題やスケジュールは計画担当者や管理者が作成しており、多くのスタッフは自分で自分の計画を決めることが出来ません。また、計画作成に当たってはお客様の都合が優先されます。計画を実行に移せば、前工程の遅れの影響を受けることもあると思います。

 実際に、介護現場にどんな問題を抱えているかと本音を聞けば、以下のような答えが帰って来ます。
(1) 日課表で指示された仕事が時間内に終わらない。
(2) 業務の途中で何度も緊急コールに応じなければならない。大変なストレスになっている。
(3) 日課表をこなすことが精一杯で、入居者の話を聞き入居者のニーズを拾う余裕がない。申し訳ない気持ちになる。
(4) 残業することになんの抵抗もない職場。この諦め感が怖い。
などなど。

 これらの問題の多くは、日課表そのもののバランスが悪いことに起因しています。計画の段階でバランスが悪い上に、緊急コールなどの外乱が加われば更に混乱は増します。

 われわれは介護施設の一日のあるスタッフの日課表(つまり1日の業務指示)を分析してみました。

時間帯別業務量分布

 図表は、ある一人のスタッフが担当する1日の日課が適正かどうかをみるものです。横軸をスタッフの勤務する1日の時間帯、縦軸を時間(分単位)として、30分間隔で業務(サービス)の所要時間を積み上げた合計時間をプロットしたグラフにしました。スタッフの持つ稼働時間を基準線(30分)とすると、スタッフの持ち時間に対して、業務量が超過しているか否かが明らかになります。

 こうして、一人の日課表のサービス業務量分布をみれば、やり切れないほど業務が集中する忙しい時間帯もあれば、業務がない時間帯や余裕のある時間帯もあることがわかります。

 このような状況をみるにつけ、組織の持つスタッフの総稼働時間は、まだまだ上手に活かせる余地があると感じていただけると思います。ムリ・ムダのない最適計画を立案する努力とともに、更なる改善を目指すマネジメントサイクルの確立が望まれます。
(続く)