昨年12月に日本介護事業連合会という団体が発足したと聞きます。報道によると、設立の目的は、日本の介護が抱える二つの大きな問題について、業界全体が一丸となって、国や自治体に改善の働きかけをするためとのことです。

 同連合会の愛知和男会長は、「例えば、今回の介護報酬改定をめぐる介護給付費用分科会の議論をみても、介護業界団体系の委員は介護保険の財源問題の解決を示さずに『報酬を上げて欲しい』と主張するだけであり、業界外の委員は、介護人材不足などへの影響をどう考えているかを示さずに『報酬は下げるべきだ』と主張するだけだった。当協会では業界内外の人が日常的に同一テーブルにつくことで、介護保険制度改正・報酬改定についても現実味ある議論が行える。」と話しています。(高齢者住宅新聞2015年1月28日付け)

 続けて、「一例ではあるが、介護報酬減算を受け入れる代わりに人員要件の緩和を認めてもらうように提唱するなどが可能だ」(同上)と、具体的なソリューションの例を上げています。このように立場の違いをこえて問題を解決しようという動きが出て来たことは、大いに結構なことだと思います。

 これは業界全体にわたる話ですが、介護施設経営というミクロな次元でも、同じです。立場の違いを超えて問題解決をして行く姿勢が益々大切になると思われます。私たちは「大介護時代」に備えて、あらゆる智慧を総動員すべく具体行動を起こす時だと思います。

 介護報酬削減は、介護施設経営に携わるそれぞれの立場にも影響を与えます。経営者は、スタッフに充分な報酬を払えない。採用が難しくなることを恐れます。持続経営のため、あるいは良いスタッフを確保するため、給与を上げるため、生産性を向上し、原資を見つけなければと思う経営者も出てくるはずです。そうでなければ余りにも「人頼り」です。

 スタッフは、今でもきつい仕事の行く先を心配します。若いスタッフであれば、やりがい、働きがいを持ちながら、所帯を持っての生涯の暮らしが描ける仕事にできるだろうかと。そこへ持ってきて、生産性の向上という経営側からの提案は、労働強化を連想させるかも知れません。あるいは、心あるスタッフはお客様へのサービス低下を心配するかも知れません。お互いの信頼関係を構築し、立場を超えた問題解決が求められる所以です。

 少子高齢化は誰もが認める通り、介護需要が増加するにも関わらず、社会保障費の財源が足りなくなることを意味する構造的な問題です。活路を見いだすには、冒頭の団体のような業界レベルの問題解決もさることながら、自らの経営問題として、解決して行く姿勢が求められます。私たちは、事実に立って問題の本質を見極め、経営者も介護スタッフも「お互いによし」となるソリューションを見いださなければならないと思っています。そういう施設経営レベルの活路を見いだす戦いがあって、業界レベルの主張が説得力を持ってくるとも思います。

 これからの時代、私たちは一番大事になる経営資源はスタッフの時間です。介護業界に限らず、さまざまな企業において、ワークライフバランスの推進が話題になっています。働く人の時間を如何に大事にして行くのかが経営に問われる時代になったのです。私たちは、施設経営に携わる皆様には、組織の時間を最大限活かして、「お客様にとってよし」、「スタッフにとってよし」、「経営側にとってよし」となる生産性向上を果していただきたいと願っています。そして、私たちは、お役に立てるソリューションを提供して参る決意です。