今、注目を集める経済評論家の記事、『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/04/27号を読みました。その趣旨は、「日本は人口が減少していくのだから、インフラへの投資はいらない」という見方に対する反論。生産年齢人口が減少するからこそ、今の日本にインフラ投資が必要不可欠なのだという主張です。
その論拠をかい摘んで拾い上げると以下のようになります。
・ 生産性向上とは、「生産者が働き、モノやサービスという付加価値を生産し、顧客が消費、
投資として購入(支出)し、所得が創出される」という、経済の基本たる所得創出のプロセ
スの「生産」を、生産者一人当たりで増やすこと。すなわち、生産者一人当たり付加価値
の拡大である。
・ 日本で相対的に減少している人口は総人口ではなく、生産年齢人口である。
・ 近い将来、我が国には総人口の「総需要」に、生産年齢人口の「供給能力」が追い付かな
い(これをインフレギャップという)時代が訪れることになる。
・ 総需要に対し供給能力が不足するインフレギャップを解消するためには、生産性向上以外
にほとんど手段がない。
・ インフレギャップを埋めることができなければ、インフレ率が健全な範囲を超えて上昇し、
貿易赤字も拡大してしまう。
・ 生産性を高めるには、「公共投資」「設備投資」「人材投資」「技術開発投資」という
「四投資」以外に、ほとんど手段がない。
以上、『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015/04/27号より抜粋
以上のお話を聞いて介護業界に当てはめるといかがでしょうか?
少子高齢化で需要は膨らみ供給は増える当てがありません。団塊世代が後期高齢者となる2025年を待つまでもなく人手不足は始まっています。仮に今よりも100万人の要介護需要が増加すれば、30万人の介護スタッフが必要となります。この4月から介護報酬は引き下げられましたが、この先社会保障費が潤沢になるという要素はどこにも見当たりません。
この介護のインフレギャップを埋める方策は、
1案 他の産業で生産性の向上をはかり、社会保障費の財源に振り向ける。
2案 介護業界自身が生産性の向上をはかる。
3案 両方ともに行う。
以上はマクロ的なものの見方です。つまり政治や行政が論ずべきものですが、現状では、まだ介護業界の生産性について多くは語られていません。しかし、インフレギャップ解決の選択肢が多くないとわかった時には、生産性の向上の議論は避けて通れないように思われます。介護業界だけは別という考え方がいつまで通用するかわかりません。
では、ミクロ的な見方、介護事業者という立場ではいかがでしょうか?漸く、利益を生む介護施設経営をすべきだという主張が現れて来ました。一般のビジネスの世界では、生産性を上げた企業が生き残ります。さまざまな企業が介護事業へ参入するようになりましたが、そうすると、そこには競争が生まれます。お客様(施設入居者)に選ばれる施設、スタッフに選ばれる施設になることが、競争に生き残るということです。お客様に良いサービスを提供し続け、スタッフの処遇を改善し続ける原資も、生産性の向上から生まれます。
私たちは、インフレギャップの解決のためには、スタッフを助ける設備やロボットなどハードへの設備投資も必要だと思います。そういう、技術革新が期待されるこれからの分野への投資もありますが、ソフトへの投資も、それを使いこなすスタッフへの人的投資もあるはずです。
ケアプランを施設のサービスとして提供して行く上では、組織マネジメントが不可欠です。私たちは、組織マネジメントの中核となる計画の最適化を通じて生産性向上への貢献を果たして参りたいと思います。