きちんとした日課表があるか?
これは、「だから職員が辞めて行く 〜施設介護マネジメントの失敗に学ぶ〜」(岡田耕一郎・岡田浩子共著 環境新聞社)にでてくる記事の見出しです。
岡田先生は、これからの就職先として老人ホームを考えている人に、施設選びのポイントの一つとして日課表をチェックすべきであると教えておられます。学生やこれから就職する人に向けたメッセージですが、採用に悩む介護施設経営者の方にとっても気になるメッセージですね。
日課表とは、老人ホームなど介護施設が利用者に対して提供する介護サービスを、介護職員の一日の仕事として時間毎に列挙したもの。これを見れば、介護職員は決められた時間に、どの介護サービスを提供することになっているかがわかります。
岡田先生は、日課表は「介護サービスを提供する仕組みの骨格部分であり、介護サービスシステムの中核である」と位置づけています。では、何故、「介護職員の日課表」が必要なのでしょうか?
日課表は介護業務の内容と介護職員を対応づけたものになっており、その介護業務の作業量はどのくらいで、それを担当する職員が何人でやるか、何分でやるかがわかる。つまり、介護職員の仕事の計画ができます。計画はその通りにやってみるものです。その計画を実際にやってみて、その通りに行かなければ、何が違うのか点検し、改善して行くことができます。これをPDCAやマネジメントサイクルと言いますが、岡田先生は以下のように具体的に解説されています。
「実際にその日課表に従って介護サービスを提供してみて、日課表通りの時間に介護が終わらなければ、職員の人数に比べて介護の作業量が多すぎるか、あるいは介護の作業量に比べて職員の人数が少なすぎるか、そのどちらかである。そこで、次にやるべきことは、その人数でも何とかなるように介護の作業量を減らすか、あるいはその作業量を減らさないでそのままにするのであれば、職員の人数を増やすか、あるいは別の方法として・・・」と。
介護職員の日課表は何のためにあるか、まとめると
・ 介護職員のやるべき一日の仕事を計画する。
・ 介護サービスの仕事を分析し、ムリ・ムダ・ムラをなくす。
・ 職員にとっては、加重負担の労働をさせられるのを防ぐ。
まだ、他にも日課表の果たす役割はあると思いますが、岡田先生が「介護サービスシステムの中核部分」であり、「介護職員の命を守る盾」とも言われている意味はよくわかります。
私たちは岡田先生の主張に全く賛同するものです。一方、何故、「きちんとした日課表があるか?」とこれほど厳しく問うておられるのか、私たちはIT介護マネジメントの営業を始めるまでは良くわかりませんでした。私たちは介護施設に日課表があるのは当たり前と思っていたからです。しかし、多くの施設の事情がわかるにつれて、日課表を持っていない施設が想像以上に多いことがわかりました。また、仮に持っていたとしても、とてもその通りに行くとは思えないものが多いこともわかってきました。
岡田先生は、日課表をないがしろにしている施設は「就職先として考えた場合、やはり避けた方が良いと思われるのだが、いかがだろうか。」と結んでいます。
少子高齢化の時代。良いスタッフが集まり定着することは、何よりも経営を助けます。そのためにも、日課表の大切さを訴えて参る決意です。
今、弊社のクライアント様では、日課表の精緻化を行って、実際にその通りに仕事をするという試みを行っています。介護職員がどれだけ楽にきちんと1日の仕事を終えることができるか・・・まずはこれが改善の目標です。
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